究極の放置ゲームとは — ナイトストックの設計思想
先日配信を開始したナイトストックについて、設計で考えていたことを書きます。「究極の放置ゲームとは何か」という問いから始まって、ゆっくり長く遊んでもらうための課金設計、ソロでコンテンツ量を確保するためにAIを相棒にしたことなど。ゲーム設計とソロ開発の話です。
先日、ナイトストックを iOS でリリース しました。1年かけて作ったゲームなので、節目としてどんなことを考えて作っていたかを残しておきます。設計思想と、ソロ開発の進め方の話です。
究極の放置ゲームとは、ほとんど触らないこと
ナイトストックの出発点は、「究極の放置ゲームって何だろう」という問いでした。
放置ゲームはジャンルの中でも幅が広くて、一日何回もタップが必要なものから、ほぼ自動で進むものまでいろいろあります。考えていくうちに、自分が作りたいのは 「ほとんど触らないで済む」方向の極端な方 だと分かってきました。
理由はシンプルで、忙しい人の生活にゲームを割り込ませたくなかった、というだけです。通勤中に慌ててデイリーを消化したり、寝る前に必ずログインしたり、そういう "ゲームに時間を取られる感覚" をなるべく無くしたかった。
アプリを開かない日があってもプレイヤー体験が壊れないこと、久しぶりに開いても報酬が待ってくれていること、これを優先して全体を組みました。
夜、寝る前に派遣して、朝起きたら装備やアイテムが"ストック"されている — NIGHT STOCK という名前は、この循環を言葉にしたものです。
ゆっくり、長く、遊んでほしい
課金設計も、これと地続きです。
ナイトストックは ガチャなし、月額パスと消耗品の計4商品のみ、月間購入上限あり という形にしています。F2Pモバイルゲームとしてはかなり控えめな構成です。
これは 「ひたすらゆっくり、長く遊んでほしい」 という願いがそのまま形になったものです。
ガチャで短期的に射幸心を煽るより、毎日少しずつ進めて、気が向いた週末にまとまって遊んで、気がついたら数ヶ月が経っている、みたいな関係を作りたい。そのためには、 お金を使った人が一気に先に進めてしまう設計 や、今日始めた人が不利になる設計 を避ける必要がありました。
月間上限を設けたのも、同じ理由です。「青天井で課金できると、熱くなって後悔する」みたいな体験を作りたくなかった。
コンテンツ量の確保という、ソロ開発の壁
設計思想が固まっても、次に立ちはだかるのは 現実的な開発力の問題 です。
ナイトストックは、全120職業、1000種超の装備、複数のダンジョン、大量のピクセルアート素材、多言語対応で構成されています。ひとりでこの物量を作るのは、普通にやれば無理です。
ここで頼ったのが AIとの壁打ち でした。
AI と何度も壁打ちした
誤解されないように先に言っておくと、AIに丸投げで作ってもらった わけではありません。装備名、装備のフレーバー、職業のコンセプト、ダンジョンのシチュエーション、エンドコンテンツ的なストーリー、それにピクセルアート素材 — どれも 自分がハンドルを握りながら、AIを相棒として何度も往復 して形にしていきました。
やり方はだいたい以下のような感じです。
- 自分でコンセプトや条件を明確に言語化する(「こういう属性で、こういう見た目の、こういうレアリティ帯の装備を◯個欲しい」など)
- AI にざっくり案を出してもらう
- 違和感のある案は削る、はまりそうな案は採用して細部を自分で詰める
- 足りなければ条件を変えて再度壁打ち
AIを 検索エンジン的・ブレストパートナー的 に使うイメージです。最終的な取捨選択は全部こちらでやっているので、ゲーム全体のトーンや一貫性は守れていると思います。
ソロ開発でコンテンツ量を必要とするジャンル(ハクスラやRPG)を作ろうとすると、これくらい AI を日常的に使わないと現実的に成立しないな、というのが今回やってみての実感です。逆に言えば、ひとりで作れるゲームの規模の上限が、この数年で確実に広がっている とも思います。
リリースはゴールじゃなくスタート
こういう設計で作ったナイトストックを、これから育てていきます。プレイヤーが増えてフィードバックが集まると、必ず 当初の設計では気づけなかった歪み が見えてくるはずなので、そこは丁寧に拾って直していきます。
ソロで、ガチャなしで、長く遊べるハクスラRPGを作って運営する — この挑戦がどこまで成立するか、自分自身も答えを知らないまま走っている感覚です。よかったら一緒に見届けてもらえると嬉しいです。